ピエール・ファラルドーさん ケベックの映画作家 エルヴィス・グラトン I 記憶が曖昧ですが。
「エルヴィス・グラトン キングの中のキング Elvis Gratton : Le king des kings 」は、3編の短編映画をまとめたもののようです。1980年のケベック・レフェランダム(ケベックの独立に関するケベック州住民投票)で、独立へ進むことが否決されたあと、ピエール・ファラルドーさんはこれらの映画を作りました。1985年が製作年だと思います。この映画は、品のないギャグやドタバタギャグが連続する映画ですが、ケベック独立反対派のカナダ連邦主義者のケベックの小市民を嗤っている映画かな、と思います。
主人公は、ボブ・グラトン(ロベール・グラトン)で、ジュリアン・プーランさんが演じています。ジュリアン・プーランさんは、ピエール・ファラルドーさんの旧友で、現在いろいろな作品に出ていますが、もともとはピエール・ファラルドーさんと一緒に映画製作をしていたようです。
今、手元にDVDなどがないので、あらすじは記憶を頼りにしていますが、つくりとしては長さ5分くらいの小さなエピソードが繋がっている感じの映画です。そして、それぞれのエピソードで、エルビス・グラトンを始めとする登場人物のおろかさや差別、侮蔑などが表現されます。完全なコメディですが、品がありません。「うっわー、どうしよう」と思うことがそっちゅうです。
ということで、記憶を頼りにしたあらすじです。
ボブ・グラトンは、自称「エルビス・グラトン」で、エルビス・プレスリーの大ファンです。エルビス・プレスリーの物まねが上手いと自信満々で、物まね大会に出て、優勝し、サンタ・バナナという南国(たぶん、キューバがモデル)への旅行を賞品として獲得します。そして、サンタ・バナナに、奥さんのリンダさんと一緒に、旅行します。帰国後、一念発起(?)して、世の中を変えることを目指しますが、エルビス・プレスリーの物真似公演中に、お亡くなりになります。そして、埋葬されるところで、彼はなんと復活します。
これが主な内容だったかな、と思います。
エルビス・プレスリーの物真似、サンタ・バナナのこと、世の中を変えようと考えるエルビス・グラトンの思想の披露等、ケベックの当時の政治状況がわからないと「?」かもしれませんが、そんなことを抜きにしても品のないギャグやドタバタギャグがいっぱいです。言葉遣いや態度の悪さは、「すごいなー」の一言の場合も多いです。この映画を見て、子どもは笑うようですが、教育的観点から言うと、エルビス・グラトンは反面教師にもってこいです。
ピエール・ファラルドーさんは、写真家として、エルビス・グラトンの撮影をする役を演じているのですが、そこで交わされる会話(赤い衣装で、極右的思想を語りながらポーズをとるエルビス・グラトンに対して、青い背景を背に(だったかな?)「もっと右、もっと右」と写真家は声をかける)などはとても有名です。ちなみに赤は「カナダ」と青は「ケベック」をさすことが多いです。また、赤はケベック自由党(カナダ連邦制に賛成の党)、青はケベック党(かつては保守党を指すことも多かったようですが、とりあえず、ケベックのフランス語話者を保護する傾向のある政党)を指すこともあるようです。
また、エルビス・グラトンは、ヒッチハイクをしていた女学生を自分の車に乗せるのですが、そこで、女生徒にかける言葉などは、たぶん、YOUTUBEにもあるのではないかとおもいます。そのくらい有名です。(内容はとても品がないです。)「J’ai un garage, un gros garage」(「自動車整備工場を持っているんだぜ、大きな自動車整備工場をな!」)というくどき文句は笑えます。
サンタ・バナナ行きの飛行機のなかで、社会運動家のフランス人(だったかな?)に向かって自分たちのアイデンティティを紹介するシーンも有名です。
サンタ・バナナの小人の独裁者が、ジャン・クレティアン(ケベック出身で自由党出身のカナダ首相。第二回目のレフェランダム(1995年)のときにカナダ首相でした)に似ていることなども、笑える人には笑えるようです。
取り留めのない紹介ですが、ケベックの事情がある程度わかっていて、フランス語がある程度わかる人には面白いのではないでしょうか。また、ユーモアの相違についても考えさせてくれます。
ケベックでは、宗教(ケベックではカトリックが多数派です)に関する言葉で、人前で大声で言うべきではない言葉(例えば、tabernacle「聖櫃」、 calice「聖杯」、 hostie「ホスチア」 など)を、日常会話で頻繁に使う人たちがいる(受けた教育や属する社会階級による)ようなのですが、そういうのもこの映画でわかります。ちなみに、そういう言葉を使うことを、sacrer「サクレ」(他動詞なら「聖別する、厳かに告げる」などの意味がありますが、自動詞なら、話し言葉として「罵る」という意味があるようです)といいます。大学教育を受けた人や親御さんからしっかりとしつけられた人たちはあまり使わないようですが、場所によっては罵る意味すらなく、単なる「残念」「失敗」「スゴイ」「ほう」といった気持ちなどを表すのに、こういう言葉を使う人たちもいるようです。大変品のない言葉なので、聞いたからと言って使ってはまずいです。
ケベックで、ユーモアというと、「Just for laugh」(英語)「Juste pour lire」(フランス語)というショーを思い浮かべる人もいるかと思いますが…なんだか長くなってしまったので、このあたりでおしまいにします。
他の記事については、2010年7月の「フランス語圏」のシリーズ記事「多分日本で初めての紹介? ピエール・ファラルド-さん ケベックの映画作家」
http://kiirohiwa.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-cebb.html
(「その1」のアドレスです)を見ていただけるとありがたいです。記事の内容は大変わかりにくいです。
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